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『絵でわかる生物多様性』の感想。2017年9月に発売されたばかりの本です。

著者は、水辺や里山の保全と再生に関する研究や普及活動を行っている理学博士の鷲谷いづみさん。絵は、筑波大や東大で環境科学を修め、現在は高尾の森自然学校スタッフの後藤章さんが担当してます。

内容は、「絵でわかる」というタイトルから期待していたよりは、専門的で難しかったです。

見開きの左ページが見出しと文章、右ページが絵(イラストや図解)という構成になっているのですが、とりあえず一読目は、見出しと絵をながめるだけに。

その上で、気になったところを拾い読みしていっている最中なのですが、現時点で、特に印象深いと感じたのが「生物多様性を保全するべき理由」です。一部引用しつつ、感想を述べてみます。

生物多様性を保全するべき理由

本書19ページ、見開きの右側には、「生物多様性」という文字が書かれた宝箱の絵が描かれています。

宝箱からは、「使用価値(ヒトにとっての有用性)」「存在価値(生命システムの存在価値)」という二つのフキダシが。

使用価値のフキダシには、材木や野菜・穀物、薬、野山で人が遊んでいる様子が、存在価値の方には、動植物の進化を示すとおぼしき扇形の図解などが入っています。

対応する左側ページには、「生物多様性を保全するべき理由」という見出しと、文章があります。

ヒトにとっての有用性を意味する使用価値は、生物多様性を保全すべき主要な理由のひとつである。しかし、地球の生命の歴史とそのダイナミズムを学び、そのかけがえのなさを知れば、誰もが生物多様性という言葉に込められた地球の生命システムの存在自体が尊重すべきものであること、すなわち存在価値にも気づくことができるだろう。

(『絵でわかる生物多様性』18ページより引用)

この部分を読んで、「存在価値」の重要性をもっと端的に語ってくれるとありがたい、と感じました。「知れば気づく」では、ダイナミズムなんか知るか!人間の都合優先!という人は説得できないでしょう。

しかも、上記引用箇所に続く部分にこうありますし。

存在価値を守ることは、現在は認識されていないものの将来世代にとっては重要性の高い使用価値を損なわないようにするためにも重要な意義をもつ。

とするなら、存在価値も結局は使用価値なんじゃないかと。ならば、

「生物多様性を保全すべき理由は、その使用価値です。現在は人間にとって価値がないと思われている生物でも、将来はどうなるか分かりませんので、保護しましょう」

と言ってしまった方が、多くの人を説得することができ、生物多様性の保全という目的が達成される可能性が高いような気がします。

ミレニアム生態系評価のシナリオ分析

とは言え、本書には生命の歴史や、生物絶滅のプロセス、国内外の制度など、生物多様性の入門段階から一歩踏み出すための知識がふんだんに詰まっています。eco検定をクリアしたレベルの人には、超おすすめ。

例えば、eco検定受験者にはおなじみ、国連の「ミレニアム生態系評価(MA)」ですが、テキストには載っていない「シナリオ分析」が紹介されています。

ミレニアム生態系評価によると、今後、社会が進むシナリオは4つ。①世界協調 ②力による秩序 ③テクノガーデン ④順応的モザイクガーデン です。

それぞれ簡単に言うと、

①世界協調:開発途上国の成長を重視し、環境政策は後追い
②力による秩序:強い国は、弱い国へのしわ寄せによって諸問題を解決。環境は劣化
③テクノガーデン:テクノロジーにより生態系を維持。不測の事態があった場合のリスクが不明
④順応的モザイクガーデン:地域ごとにいわゆる里地・里山的な環境を維持

という感じ。

生態系の維持には、④が最も理想的だそうです。

しかし、人材の確保とか、経済発展とかも考えると難しそうなので、①③④のいいとこどりで行けないものかと、私は思いました。とりあえず、②は避けたいですね。

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